伝言板 

電車の画像


 当時は、田舎に住んでいると、外出はバス移動が中心でした 


 電車に乗るということは、市内の繁華街に出るような場合だけなので、
ほとんどピクニック気分です 


 子どもの頃は、それは年に数回の楽しい行事でしたが、
高校生にもなると、オシャレにも目覚めるし、
お友だちと約束をして市内に出ることも頻繁になりました 





 お友だちとの待ち合わせは、駅舎の待合室です。


 それぞれここまで来るのに、一時間に一本あるかないかのバスに乗ってくるので、
みんなが同じ時間にぴったり集合する事はありません 


 電車の出発時間は決まっているので、それに合わせると、それぞれ一時間前になったり、
30分前になったり、ギリギリ5分前に駆け込んで来るなんてことになります 


 そこで役にたつのが、駅舎にある伝言板です 


 黒板とチョークが置いてあり、誰でも自由に書き込めます 


○高3Aまりっち、花咲川で食事中


同じく、エミエミ、散歩散策中


 などと、早く来たお友だちは、それぞれメモを残し、フラフラ散歩に出たり、
駅舎の裏側の小川で、持ってきたおにぎりを食べて涼んでいたりします。


 コチサは、運良く、バス到着が電車の出発15分前くらいのローテーションの地域に住んでいたので、
だいたい駅舎に着けば、そのままっているパターンでした 


 それでも、
同じく、コチサ、到着しました
などと伝言板に書き込んで待っています 




 まりっち
「そこに座っているんなら、伝言板に書かなくてもいいんだよ(/_;)」


 コチサ
「だって、コチサもなんかきたいし・・・





 散歩から戻ってきたエミエミが、そんな光景を横目に、
○高3A、これから高松市内に出発!
と書き込み、
「さぁ、行こう!」
電車の到着を知らせます 


 そして、夕方戻ってくると、午前中の伝言板の文字は消されていて、
新たなき込みが積まっています 


帰り遅い、ノボル、母へ
GHに行く。後でね
しも、ます、せん、8時、マキコ
など、この駅舎を利用する地域の人たちの大切な伝言が書かれています。


 『個人情報』がどうのという時代ではなかったので、
暗号めかした文章は、家族や恋人同士のを確認する証なのかもしれません 


 時には、
さよなら、わたしの思い出
とか、
いつかまた会おうね
など、悲しい恋の終わりを予感させるようなものがあったり、
先ほどは、お礼も言えずにすみません。ありがとうございました
とか、
怒り心頭、ここで冷ます
など、人にぶつけられなかった『喜怒哀楽』を綴った文章もあります 


 そんな文章が羅列している片隅に、エミエミが、
○高3A、ただいま到着
と書いて、コチサたちの市内観光の旅が終わります   





 エミエミ
「懐かしいなぁ~、いい時代だったよね(^^)」


 コチサ
「あの伝言板ってもあるの 


 エミエミ
「あるわけないでしょ(-"-)」


 コチサ
「ふーん、なんかしいね。暗号を解いていろいろ想像したり楽しかったよ。
でも今だって待ち合わせしている人はいるのに、なんで無くなっちゃったんだろ 


 エミエミ
「ウチの娘だって、小学生から携帯電話を持っていたわよ。
それに個人情報とかもあるし。設置しても、もう誰も書かないわよ(^_^;)」


 コチサ
「じゃぁもう、野口五郎さんのヒット曲『私鉄沿線』に、
哀愁を感じる人って少ないのかな 


 エミエミ
「・・・


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