恋するペナント 

玄関ドアの画像


 三軒隣に下宿している大学生のお兄さんが、登山に行って足を骨折して帰ってきたらしい 

 近所に住む中学生の少女たちは、密かにれるお兄さんの部屋に、お見いに行く事にしました 




 初めて通される二階の奥、三畳一間の下宿部屋 


 障子を開けたとたんに、「大人の匂い」が鼻を突きます。


 それは、お父さんやおじさんたちの匂いとは違う、もっと強烈だけど、そんな嫌ないじゃない・・・





 お兄さん
「良く来たね、まぁ適当にって 


 そう言って、お兄さんは、万年床を手際よく押入れに丸め込み、場所を確保します 


 少女A
「ケガしたそうで、これお見舞いです  


 手作りクッキーを差し出す少女たち・・・





 お兄さんの部屋は狭く暗くて、昼間でも裸電球がついています 


 その裸電球に照らされた天井から壁にいたるまで、三角形の「ペナント」が張り巡らされています 





 少女B
「わぁー、いろんなところに行ってるんですね(#^.^#)/」


 お兄さん
「うん、登山が趣味だからね。じゃぁ今度キミたちにもペナント買ってきてあげるね 


 少女C
「嬉しい\(^o^)/ ありがとうございます。ところで、ケガした足は大丈夫ですか?」





 お兄さんは、左足をギプスで固定されてグルグル巻きにされています。


 そこにたくさんの寄せ書きが・・・





 少女A
「私たちも早くよくなるように、何か書いて良いですか?(*^O^*)


 お兄さん
「あぁ良いよ、空いてる場所に書いてね 






 そう言って、マジックを貸してくれるお兄さん。


 しかし、ギプスにはたくさんのメッセージが書かれていて、書く隙間が見つかりません 


無茶した大ばか者」「ギプスを壊す役は任せろ!」「若気の至りよ永遠に」「お前は、我がワンダーフォーゲル部の誇りだ」などと、大学生の男同士のバンカラな友情溢れる言葉が並んでいます 


 「お兄さんは、お友だちからもわれているんだ


 なんだか嬉しくなる少女たち 


            


 ようやく足の裏側にスペースを見つけて書き込もうとすると、細いサインペンで書かれた優しい筆跡が・・・


ごきげんよう 永遠の山よ いくどでもごきげんよう


と、ハイネの詩集の「海へのあいさつ」の一節をもじって「山」に言い換えた一文が・・・


            


 多感な少女たちは、そこに女子大生という大人の女性の影を感じて、何も書けずにマジックをおきました 





 少女A・B・C
「じ、じゃぁ、私たちこれで。お大事に 


 逃げるように部屋を飛び出す少女たち   


 そして、「おい、待てよ。 キミたち、どうしたんだよ、いったい?」と、怪訝な顔をした、
お約束の、鈍感生真面目な好青年 





 40年前にブログがあったら、なにも駅前で「私の詩集買って下さい
などとやらなくても、こうやって淡き初恋を語れたのに・・


 それにしても、あのペナントや、ギプスに文字を書くイベントなんかは、
いまどこにいっちゃんたんだろ 


コメント:

コチサさん、よくご存知ですよね。
「私の詩集、買って下さい」
と多感な少女が街頭に立つ光景は東京だけだと思っていました。

Re: タイトルなし

> コチサさん、よくご存知ですよね。
> 「私の詩集、買って下さい」
> と多感な少女が街頭に立つ光景は東京だけだと思っていました。

す、鋭い(^_^;)

コチサの故郷には、詩集少女よりもお遍路さんの姿がいっぱいでした。

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