おはなしピエロ公演-「一年の幸せの素」
鏡開きの前日1月10日の夜中、家族が寝静まった家の中で「鏡餅のもちのすけ」は、むっくりと立ち上がりました。
長い間座っていたので体が固まっています。
まずは伸びをして、鈍った体を柔らかくします。
そして、家の人に気づけれないようにゆっくりと外に出て、空に向かって駆け出しました。
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もちのすけ
「(はぁはぁ)神さま、遅くなりました。
松岡さんの家の鏡餅の『もちのすけ』です」
神さま
「遅いぞ、もちのすけ。
他の家の鏡餅たちは、もうとっくに帰っているぞ。
じゃぁ、早速、報告をしてもらおう」
もちのすけ
「はい。
ボクが飾られていた松岡さんの家は、パパとママと楓ちゃんとほのかちゃんという女の子の姉妹の、4人で暮らしています。
パパは大工さんで一生懸命仕事をしています。
ママはお家で、楓ちゃんとほのかちゃんの世話をしながら元気に過ごしています。
ただこの家は、お姉さんの楓ちゃんと妹のほのかちゃんがすぐ喧嘩をします。
でもボクがみたところ、仲が悪くて喧嘩をしているんじゃなくて、本当は二人とも大好き
なのに、つい喧嘩をしちゃうって感じでした」
神さま
「そうかよくわかったぞ。
もちのすけが飾られていた松岡さんの家は、パパとママはとても仲が良い。
問題は、楓ちゃんとほのかちゃんがつい喧嘩をしてしまうということだな。
どうやら仲が良すぎてついお互い意地をはってしまうようだな。
じゃぁ、もちのすけには、意地を張らないで素直になる注射をしておこう。
さぁ、もちのすけ、注射をするぞ。
お腹を出しなさい」
もちのすけ
「えー、嫌です。
注射は痛いから嫌いです」
神さま
「こら!
もちのすけ、お前はなんてことを言い出すんだ。
お前たち鏡餅の六つの役目を忘れたか。
そこに立って、もう一度鏡餅の六つの役目を言ってみろ」
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そう言われて、もちのすけは鏡餅の六つの役目を復唱するのでした。
今回のお話は「鏡開き」をテーマにしたものです。
鏡餅は、年末から新年にかけてその家の様子を伺い、鏡開きの前日に神さまに報告に行きます。
神さまはその報告を聞いて、その家の問題点を探り、今年一年その家が幸せになるような薬を調合して、鏡餅のお腹に注射をします。
注射をされた鏡餅は急いで家に戻り、翌朝家族が目覚めるころには何食わぬ顔でもとの場所に座っています。
そして鏡開き…
家族の「幸せの素」が入った鏡餅を食べた一家は、一年幸せに過ごすのでした。
もちのすけは痛がりながらも神さまから注射をされて、その鏡餅を食べた楓ちゃんとほのかちゃんはとても仲良しになったというお話しです。
「ボクは鏡餅のもちのすけでーす♪」
「これから神様に報告に行くんだ♪」
「神さま、ボクは松岡さん家に飾られいてるもちのすけです♪」
「イヤです、注射はキライです~」
「鏡餅の六つの役目、その①~♪」
「鏡餅の六つの役目、その②~♪」
「鏡餅の六つの役目、その③~♪」
「あっ、あー(注射を打たれるもちのすけ)」
「さっ、松岡さん家に戻らなきゃ」
「ふぅ~鏡開きに間に合った~♪」
毎年のことですが、年が変わった一月は園児たちが急に成長をしています

おはなしの聞き方や入り込み方が違います

コチサが「楓ちゃん」と「ほのかちゃん」の姉妹関係を間違えると、「えー、お姉ちゃんは楓ちゃんの方だよ」と突っ込みが入ります

笑うところは笑い、考えるところは考え、大団円では拍手をくれます



そして終わった後、「面白かったよ」というねぎらいの言葉も忘れません

もうここまで来ると、どっちが大人でどっちが子どもかわかりません

園児たちが「子どもの発表会を温かく見守る親」に見えてしまいます

最上級生の5歳児は、「おはなしピエロ公演」もあと2回で卒業です

最大60回聞いてくれた園児もいます

この時期になって毎年思うことは、「その中のひとつだけでも、いつか思い出して役に立つ経験に活かされるものがあれば嬉しいな」という事です

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